ガリア戦記 (岩波文庫)



ガリア戦記 (岩波文庫)
ガリア戦記 (岩波文庫)

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カエサルの人間臭さ

カエサル率いるローマ軍の戦記です。
戦いの描写や部族の内部事情等を書き連ねています。
特に、カエサルの人の感情に訴えかける行動に着目しながら
楽しく最後まで読み進められました。

ただ、私の知識ではローマ軍とガリアの各部族との位置関係や
戦い方をうまく想像することができなかったための歴史初心者には厳しいという
意味で星3です。

足りない部分は、塩野七生氏のローマ人の物語ルビコン以前・以後を参考に読み進めました。
人間臭いリーダーの記録です。
タキトゥスの『ゲルマニア』と双璧

カエサル著の『ガリア戦記』です。カエサルというのは古代ローマの皇帝(厳密には違いますが)ジュリアス・シーザーのことです。
ガリアというのは、現在のフランス辺りです。古代ローマ時代は僻地でした。
カエサルの、ローマの将軍としてのガリア遠征記です。
当然、当時のガリアを知るにあたって重要な史料です。
と同時に、名文として名高いです。
文体としては、起こった事実を淡々と記述しているものですが、ストレートだからこそ伝わってくる臨場感があるのでしょう。どうしても翻訳という形をとると、文章の善し悪しというのは分かりにくくなるものですが、本作はシンプルだからこそ、翻訳であってもある程度分かりやすいのかもしれません。

ただ欠点をいえば、無駄な描写が無いということは、戦闘の記録としては良いのですが、細部については別の手段で補わなければなりません。当時のガリアの生活風俗など。
そういう部分についてはタキトゥスの『ゲルマニア』をどうぞ。

古代の政治パンフレットの一例

 これはカエサルが書いた古代の政治宣伝パンフレットである。本当に致命的に重要なことはすべて隠してある。
誰が読んでも大したことは引き出せないようになっている。概要しか書いてないのだ。
 簡潔な文体が褒められているが、つまりは削りに削って名文たるに必要な部分もまた削ってあるということだ。
削り過ぎでけなす手がかりすら見当たらないように削ってあるという事に過ぎない。この点もまた政治的。
 だからこの本は古代の資料として価値が高いが、文学的な価値が高いという意見は見当外れであると思う。

 さらにカエサル自身の感情や意見が見えにくく、またローマの征服的イデオロギーが巧妙に隠されている。
「ローマが危険なのでプロヴァンスを獲る。プロヴァンスが危険だからフランスを獲る。フランスが荒らさ
れるからドイツを征討する」式の発想では世界を征服するまで止まりようがないであろう。また、相手がどう
しても必要としているものまで認めようとしないのでは戦闘になる。それを見越して要求するローマのやり方
は今日の某大国と同じである。ここでカエサルがどう描写しようともよくよく見直せばローマ軍が征服軍隊で
ある事ははっきりしている。
 ローマものを読んで喜んでいる人は少し自省した方がよい。この本が古来政治的指導者に読まれ、軍備の必
要性や支配被支配の観念を植え付けたのだとすれば、これは一種の毒本である。
硬質な物語

 ノーベル文学賞が 太古からあったとしたら カエサルは間違いなく 本作で 入賞していたと言われているらしい。小林秀雄も読み始めたら止まらなくなり この本で一編の評論を書いたほどである。

 いうまでもなくカエサルはローマ帝国の創始者であり シェイクスピアをして「ジュリアスシーザー」という戯曲を書かしめた政治家である。そんな彼が 文章の達人であったということは 歴史の恵みの一つかと思う。

 とにかく簡潔で力強い文体が魅力である。高村薫あたりも影響を受けたのではないかと思うくらい硬質だ。語られている内容は戦争の記録である。叙事詩ですらない 事務的な報告書である。しかし それが読ませるわけだ。

 塩野七生という作家に影響されて すっかりカエサルのファンになった小生である。単純な話だが。
戦術の天才は文才も

本書を読む前に、いくつかのローマ帝国関連の書籍を読んでいました。
その中で読みたい本としては、本書とギホンの著書の二冊。
あまりにも有名な著書ですし、日本語訳されているため本当の良さはわかりにくいのかもしれませんが。
(ラテン語読めませんが)
電車等でも持ち歩ける文庫サイズだし、お勧めの一冊です。



岩波書店
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